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コラム「異見と意見」

グローバリゼーション時代を生きる

 グローバリゼーションという言葉が日常的に聞かれるようになって久しい。しかしその意味の理解は人によってまちまちで、この日本では誤解されている面が多いように思う。

 今、アメリカのサブプライムローン破綻を発端とした世界的な不況で、100年に一度の大不況だと言われている。遥か遠くのアメリカでの金融破綻が、あっという間に大西洋、太平洋を渡り、地球規模での経済大混乱を引き起こすのは、正にグローバリゼーション時代だからだといえる。遥か彼方のことだと油断し無関心で居ると、とんでもない影響を受け、引っ掻き回され、あるいは時代の流れに取り残されてしまうことになる。

 しかし如何にグローバリゼーション時代だからとはいえ、アメリカの経済高官が「100年に一度の大不況」と言ったからといって、この日本までもが「100年に一度の大不況」などという言葉まで受け入れ、ばたばたすることはない。まだ70年間しか生きていない私でも、今とは比較にならない失業者や生活困難な人達が街にあふれていた経済的混乱時代を経験している。

 グローバリゼーション時代に大切なことは、目先や身辺地域(ローカル)だけでなく、地球規模(グローバル)での経済社会の変化に常に関心を持ち、動向を観察し、情報を集め分析し、その中での自分の位置づけを冷静に判断し、適切に対処することである。適切な対処の基本は、他者に合わせる、つまり真似することではなく、如何に他との違いを確保、際立たせるかということである。真似はどこまで行っても真似であり本物にはなれない。相手が変わる度に振り回され、結果として個性を失い、その中に飲み込まれ、存在感さえ失ってしまう。つまりこの時代に大切なことは、大いなるローカリゼーションを図ることである。世界規模で他との違いを顕著にして、存在感、存在価値を高めることである。この点で私達日本人には誤解があるように感じられる。

 この日本社会は、戦後の貧しさから現在の豊かさを勝ち取る過程で、日本の文化も日本人の心も失ってしまったといえる。日本社会が歴史的文化的に全く違った発展過程を経て今日の姿があるにも拘らず、国民も社会もアメリカで発展したものをそのまま取り入れる傾向がある。世界第2の経済大国になって以来既に40年を過ぎ、十分過ぎるほどの豊かさを得た今もなお、多くの国民は更なる物質的豊かさを追求する欲望から抜け出せず、精神的ストレスを貯め、地域社会や他者への配慮、思いやる心の余裕を失い、社会には金銭に係わる憎悪や悪事がはびこり、しかも多発する殺傷事件の50%以上は近親関係で発生しているという。あの戦後の貧しく困難だった時代でも、金銭への拘りは卑しいもの、恥と感じる精神文化があった。お互いに助け合う心があり、子供は親だけでなく地域社会が育てる風土があった。世界に目を向けながらも、日本的な良さ、特徴を保ってこそ、世界の中での日本の存在価値があるといえる。

 一方企業では目先の利益を追うあまり、各社が同業種へ集中して厳しい競争や切り離し撤退を繰り返し、または少子高齢化の中で地方社会荒廃には無関心で首都圏へ集中したり、さらには低賃金に拘った安易な海外移転、リストラという名前の社員解雇やM&Aという会社売買がはびこるようになった。その結果、かつて日本経済の驚異的発展を実現し、その経営を特徴付けた終身雇用、年功序列制度という日本の国民性、精神文化に基づいた日本的経営が消えて行った。日本的経営の特徴は、企業が社員を家族の如く育て、守り、社員もまた勤勉で上司や先輩を見習いながら年齢・経験に応じた自己成長を図り、勤務する企業への帰属意識と誇りを持ち、困難にも耐えその発展を支えたことにある。特徴ある日本社会の中で育った日本人を生かす、この特徴ある日本的経営こそが、グローバリゼーションの中で日本企業が競争力を確保する為の切り札ではないだろうか?低賃金を求めて世界をさまようのではなく、社員を育て、育った社員を維持し、その上で、世界中どこででも作れるものではなく、日本で作ることに有利さがあるもの、サービスを開発することが大切である。

 一方で社員に目を向けると、このような環境変化、グローバリゼーション時代にも拘らず、その意識はグローバルな世界を見ていない。同程度の仕事なら、遥かに低い賃金で取組むことが出来る人が世界中にあふれていることに無関心で、かつて勤勉だった日本人は、今やローカルな豊かさの中にどっぷり浸かっているだけである。日本人が現在の生活水準を維持したければ、それに値する価値ある仕事が出来るように、自己研鑽、自己成長すべきである。低賃金の人でも出来るような仕事しかできずに高い賃金を得て、高い生活水準を維持したいというのは、あまりにも矛盾している。

 このような認識から当社は、グローバリゼーション時代に通用する改良型日本的経営をベースにして、日本人が日本に居てやるべきビジネスへ大きく舵を切っているところである。

(H21.7.9 記)