コラム「異見と意見」

二つの寄稿から

 今年になって二つの団体からの依頼を受け、自分の体験とそこから学んだこと、それに基く自分の主張などを纏めて寄稿し、それぞれの会誌「科学技術と経済」5月号、「世界と議会」8月号に掲載された。その一つはトヨタ自動車名誉会長豊田章一郎氏が第5代会長を務める「社団法人 科学技術と経済の会」、他の一つは、時の衆議院議長又は議長経験者が会長を務める「財団法人 尾崎行雄記念財団」である。


 (社)科学技術と経済の会は、新時代のリーダーとなるべき人材の発掘・育成、各分野の企業経営者・専門家の意見交換の場の提供、世界的視野に立った問題解決のための国際交流を推進することなど、5つの重要テーマを持って活動している、創立30年になる団体である。私は1979年に英語も全く話せず、予備知識も知人もないミネソタ州に、当日のホテル予約もないまま航空券と3,000ドルの現金を持っただけで、たった一人で渡り、会社設立から顧客開拓、最後には工場建設から運営まで、通算6年間滞在した体験とそこからの教訓を大略次のように纏めて寄稿した。

 

(1)「ニュースは事実よりも奇なり。」ニュースや記事はそれ事体は事実でも、決して全体の実態を表してはいない。非日常的な事ほどニュースバリューがある事から考えれば当然のことである。一つの社会、その中だけで得た自分の知識の範囲内での想像や伝聞だけで判断、決めつけるのはではなく、自分の目、耳、体験を通じて事実を把握し、異文化を理解し、相互に認め合う事が、異文化衝突の多い最近の国際社会では極めて重要。

 

(2)「グローバリゼーションとは欧米文化への追従ではない。」異文化に学び良い点を取り入れ、情報公開し、共通の基準を持つことは大事なこと。しかし一方的に欧米の文化、価値観に合せるのがグローバリゼーションではない。他から学びながらその一方で、他が学びたいと思えるような、オリジナリティのあるものを提供する、Give & Takeこそが真のグローバリゼーション。

 

(3)「なせば成る、なさねば成らぬ何事も。」という先人の言葉がある。「百の知識よりも一つの行動。」学歴や知識はいくらあっても活用しなければ無益。勇気を持って行動すること。間違いに気づいたら勇気を持って改めれば良い。問題に直面したら逃げ出さずに真正面から取り組めば良い。成果は後からついて来る。

 

(4)故郷を離れて初めて故郷という言葉の味が、祖国を離れて初めて祖国という言葉の味が分る。毎年多くの日本人が海外旅行をするが、それを通じて見聞を広める事や、異文化に対する理解を深める事は非常に大切。しかしその異文化との対比を通じて、自分の国、自分の文化を知る事も極めて大切。

 

 一方、日本の憲政史上に偉業を残した憲政の父尾崎行雄を記念する(財)尾崎行雄記念財団からは、新しい時代の企業のあり方、企業の社会的貢献をテーマに寄稿依頼された。私は最近続出する不正、不祥事、凶悪犯罪と犯人の低年齢化の実態との関係で、「子供は親の背中を見て育つ。子供が悪いのではなく大人が悪い」「社会は民度以上には良くならない」「自己利益至上主義の企業経営が民度低下を招く。

 

 企業は強力な社会人教育機関」という日頃の自説を基本に、既に経済大国と言われるようになって久しい日本の企業は、社員育てを重点に自社利益に片寄った企業戦士育てから、良き社会人育てに移すことこそ、新しい企業のあり方、企業の社会貢献であるとの提案を行った。同時に単なる言葉、主張だけでなく、それを実践して18年経った当社の経営理念と経営を「実験企業(株)日本コンピュータ開発」として紹介した。

 

 既に物質的に十分に豊かになった日本。新しい時代は、物やお金だけで価値を計る時代ではなく、心を大切にすべき時代。社員と共にこの新しい時代、新しい経営にチャレンジしたい。

 

(H15.7.18 記)