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コラム「異見と意見」

企業が最優先すべきかつ最高の社会貢献は、社員を私物化し
企業戦士に育てるのではなく、良き社会人に育てること!

 企業が利益を追求することは当然のことである。しかし、あのバブル期に多くの企業が自らの本業、社会的役割を忘れ、目先の収益確保だけを追求した結果、それがどういう事態を招いたかは言うまでもない。

 そもそも企業とは何のために存在するのか。そして社会とどう接していくべきなのか。21世紀を目前に控えた今、もう一度企業の在り方について考える時期に差しかかってきているのではないだろうか。

 日立系ソフトウェア会社として設立され、昨年、設立15周年を迎えた(株)日本コンピュータ開発(本社、東京都・品川区)は「社員も会社も社会との間でGive&Takeの関係を」という考えを原点に、着実に実績を積み重ねてきた企業である。これまでの同社の軌跡と21世紀の企業のあるべき姿について代表取締役である高瀬拓士社長に話を聞いた。


昨年で、設立15周年を迎えましたね。これまでを振り返ってみていかがですか?
 アメリカ、ミネソタ州に設立したハイテク会社の経営に携わっていた1987年、日立製作所時代の先輩であった創業社長が病に倒れるという非常事態で、突然この会社の経営を委託され、実態も知らぬまま創業間もない会社に入社した訳ですが、そのとき会社の設立に係った知人に言われたのが「不況がきたら最初に倒産する会社」という忠告でした。その会社が、この厳しい不況を、銀行に頼ることなく突破し、売上高、規模共に当時の4倍にまで成長し15周年を迎えられた訳ですから、正に夢のようです。

バブル経済崩壊後、同業他社が次々と経営難に陥る中、急成長を遂げた要因は?
 先代社長が逝去し、私が社長に就任して、まず取り組んだことは、経営基盤を確立することと明確な経営理念を定めることでした。多くの企業がバブル経済に浮かれている中で、当社は将来の不況に備えて、一社依存取引からの脱却のための業務や取引先の多様化、財務体質の強化、そして組織の簡素化や軽量化を徹底して行いました。それらのことが、バブル経済崩壊後の影響を軽減することに役立ったと思います。

 またその一方で、明確な経営理念を定めると同時に、他社が育てた社員を引きぬくのではなく、好不況に関係なく、新規学卒者のみの採用を続け、自らの努力で育てた社員にこの理念の理解と浸透を図ってきました。不況による採用停止やリストラをしなかったことなども今日の結果に結びついたのだと思います。

その経営理念とは?
「社会に役立つ仕事をしよう」
「社会に役立つ活動をしよう」
「社員と共に良き市民(企業市民:Corporate Citizen)になろう」
の三項目です。

 そもそも企業が日々運営できるのは、そこに健全な社会があるからです。だから、企業が一方的にその社会の恩恵を受けて、営利活動だけをするのではなく、社会に対して何らかの形で貢献するのは当然のことであり、企業とその社会との間はGive&Takeの関係でなくてはならないと思います。

 私は現在の日本で、企業の社会的貢献としての最優先課題は、社員を私物化し企業戦士に育てることではなく、良き社会人に育てることだと思います。


企業は最高の社会人教育機関

良き社会人の育成?
 ええ。つまり、社会や会社に依存するのではなく、社会や会社とGive&Takeのできる、自立した社会人を育てることです。しかし、大半の日本の企業は、経済大国と呼ばれて久しい現在に至ってもなお、利益の追求のため自社に都合の良い企業戦士育てに走っているような気がしてなりません。バブル経済崩壊後に露呈し続けている政財官界の不正、不祥事などは、その組織で育った人が組織内での責務を熱心に果たそうとした結果として、引き起こしているケースが多いと思います。

 こうした実態を見て思うのは、企業は資本主義の申し子として、利益の追求に向かって活動する営利団体であると同時に、大変な社会人教育機関であるということです。社員は知らず知らずのうちにその企業の価値観で、教育されてしまうのです。企業経営者は、そういう認識を持って経営に当たることが大切だと思います。

より良い社会を作るためには、社員と共に企業も良き市民になることが先決であるということですね?
 おっしゃる通りです。社会に存在価値を見出せない企業が倒産するのは当たり前で、倒産することこそ社会貢献だと思います。一方、生き続ける企業が行うべき最高の社会貢献は、社員を良き社会人に育てることだと思います。

 生き残るために、時には社会に不要な仕事をしたり、あるいは社員を切り捨てる例が多く見られます。しかし、私は生き残る経営をしようとは思いません。この会社をいつ潰れても良いような会社に育てるのが私の夢です(笑)。企業が倒産して困るのは顧客や株主、そして社員に大変な迷惑をかけるからです。

 従って大切なことは、企業が元気なときに、顧客や株主に精一杯のサービスをすることです。一方、社員はいつ会社が倒産しても路頭に迷うことがないように、どこに行っても通用する人材に育ててあげることです。どこの会社にでも行ける力があるにも拘わらず、この会社が面白いからずっとここに居たいと社員が言ってくれる、そんな会社に育てるのが理想ですね。


経営者は世の中を変えることができる最適の立場に居る

では21世紀の経営者のあるべき姿とは、どのようなものだと思われますか?
 戦後の荒廃から立ち直るという共通目標のため、大切な日本人としての心を一時的に脇に置いて、一億総企業戦士となって働き続けた結果私達は今、既に充分な物質的、金銭的な豊かさを手に入れました。にもかかわらず私達は、一時的に脇に置いてきた、あの大切な日本人の心を思い出すこともなく、自己中心的で責任感のない、かつ無気力で自己主張のない日本人に成り果ててしまったような気がします。今の日本人に一番必要なのは自立心、自己責任に基づいた共生の心だと思います。

 私は、政治も教育も、民度以上には良くならないと思います。その民度を向上させることができる最も適した立場に居るのが、選ばれた市民である企業経営者だと思うのです。経営者は社員との間の利害関係を通じて、社員に対して大きな影響力を持っています。

 これは私自身の自戒も兼ねて言うことですが、経営者は選ばれた人間なのだという自覚をもっと持つべきだと思います。売上げ目標を掲げるだけでなく、明確な理念を社内外に掲示し、企業も社会の一員であるという認識を持って社員の指導・育成、企業の経営に当たれば、きっと良い社会が生まれると思います。