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日本コンピュータ開発

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コラム「異見と意見」COLUMN

当社の常識は一般企業の非常識

最近、NCKのビジネス力向上へ向けたアドバイスを受けている、その道のベテランコンサルタントから、NCKの現状について次のような指摘を受けたという。曰く「NCKの今一番の問題は“営業力が無い”ことに加えて“売れるプロダクトも無い”こと」

この話を聞いた私は心の中で“その通り、当たり前だ!”と思った。日頃から「当社の常識は一般企業の非常識」と公言して止まないNCK。「生き残る経営より、いつ倒産しても良い経営を!」「儲かる仕事より、儲からないが社会に役立つ仕事を!」「“わたし営業する人、あなた開発・製造する人”などという発想での営業活動など不要!」などなど、NCKはその経営、ビジネスの進め方が一般企業とは違うことにこそ、その存在価値がある。だから一般企業の常識を持ち合わせた人から、その基準でNCKが褒められる様になったら、それはNCKが既に末期状態にあると言うことである。NCKには「一般企業と同様な営業力や、担いで売り歩くプロダクト」など不要である。そんな形のビジネスを目指さないことが大切である。

この指摘を聞いて、中途採用しない当社が、過去にたった一人だけ中途採用した人のことを思い出した。彼は大学卒業と同時にIT企業に就職して営業経験を積んだ後海外体験をしたくて退社し、知人を通じて私の海外人脈を頼ってやって来た。そこで彼をNCKの一時的社員扱いにして、友人がシカゴで経営する会社で1年間就労体験出来るよう取り計らった。彼は帰国後、経験を生かして私の支援に応えたいとNCKに入社した。しかしながらその経験を生かすことなく、過去の営業経験そのままの営業活動をしていたが長続きせず退社した。その時のセリフが「NCKには売る物(プロダクト)が無く、営業できない」ということだった。“プロダクト”の無いNCKで、一般企業で身に付けた“営業力”で営業をするのはさぞ辛かったことだろう。彼には“当社の常識は、一般企業の非常識”がまったく理解出来なかったのである。

一般に企業は、先ずは他社に負けない“優秀な学生”の採用競争に挑み、採用するや社内教育や日常業務で叱咤激励してビジネス・技術力を鍛え、他社には無い、他社より優れた、あるいは他社に先駆けて競争力ある製品を開発し、カタログ化し、価格政策を練って、それを逞しい “営業力”で弁説巧みに顧客をその気にさせ、時には顧客をだまし、時には他社を出し抜く為に飲ませ食わせの接待をし、あるいは大幅な値引きをし、その利益確保を開発・製造部門に押し付けながら、受注ノルマ達成の為、受注競争に駆けずり回るのだろう。

今やグローバル時代。大抵のハードウェア製品は、誰かが開発するとすかさず地球上のどこかで模造品が作られる時代。ソフトウェアでも、発売するとすぐにそれを上回る製品が世界のどこかから飛び出してくる。今最先端のものも、売れ始めた頃には、あるいはちょっと油断をすると、開発コスト回収も出来ない内に陳腐化する。開発終了後間髪入れずに次の製品開発が出来ないと他社との競争に取り残されてしまう。だから“プロダクト”ビジネスを進める企業は、社員も経営陣も心の休まる時はなく、常に他社を意識し、他社に勝る“プロダクト”開発を続けない限り、ビジネス競争から落伍して行くことになる。その為の生き残り競争は社員採用段階から始まり、社員教育制度を整えて企業戦士への育成を急ぎ、社員を叱咤激励し、ビジネス競争にチャレンジさせ、社員を効率よく働かせるシステム開発も続けなければならない。それも一つの経営の仕方であり、そのことに生き甲斐を感じる人が居ても良い。しかし、そのような競争に誰もが競って参画し、多くのエネルギーを消耗することは無いのではないだろうか。むしろ社会が必要としているにも拘らず誰もが気付かず、あるいは無関心でいるものを発掘し、取り組むことを競ってはどうかと思う。

そのような考えから当社は敢えて一般企業とは違う道を選び、当社の経営理念①に定めているように、“社会に役立つ仕事”、つまり自分が売りたいものを売るのではなく、顧客・社会が必要としているもの、役立つサービスを提供することをビジネスの根幹に据えている。つまりNCKにとっての“プロダクト”とは、営業活動の結果生まれるものであって、予め開発して置くものではない。だからNCK社員には、他社との類似品を生み出す技術や競争力ではなく、顧客の期待にいつでも応えられるような“何でも屋”としてのIT活用技術や知識の修得に励んで欲しいと思う。その上で社員全員が、弁説巧みでなくても良いから、社会に誇れるNCKの経営理念に基づくNCK文化育ちの、人の良さを生かした営業マンに育って欲しいと願っている。本業であるユースウェアビジネスに欠かせない“IT使いこなし力”、社会に誇れる経営理念を背景にした“企業文化”、その下で育った“すばらしい社員”、それらを“有機的に結合させ生かす力”こそがNCKの営業力である。それは仕事を通じて育てるものである。

(2011.10.31 記)

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