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コラム「異見と意見」COLUMN

企業が最優先すべき社会貢献

新入社員が入社式を迎えたその時に、既に世の中では来春卒業予定者の本格的就職活動が始まっている。当社(NCK)も3月には就職セミナー(学生の就職活動支援を目的とした就職への取組み方セミナー)を、そして4月には会社説明会を始めた。

あの採用難のバブル経済の時でも、当社の採用活動は他社よりはるかに遅く、6月後半にならないと本格化しなかったのに比べると、この時期にセミナーを開くのは大きな変化である。当時NCKは、学生たちが最終学年に入る早々から、採用活動で学業を乱すのは良くないと考えていた。

しかし、昨年から方針を変更し、できる限り早い時期に、短期で就職活動を終らせ、最終学年位は安心して、本業である学業を中心とした学生生活に、全力で取組んで欲しいと考えるようになった。短大生にとってはわずかに2年間、大学生にとっても4年間しかない学生生活を、何ヶ月にもわたって就職活動で消耗するのはあまりにも浪費であると思う。

当社では、導入教育の一環としての合宿研修での討論テーマとして、昨年からは、従来のテーマ「学生と社会人」、「青年の生きがい」に、「企業のあり方とNCKの経営理念」というテーマを新たに加え、グループ単位で、十分な討論をし、その後でグループ発表をすると共に、各人毎に本人の理解と意見を基にしたレポートを提出してもらっている。

例年の2つのテーマは、学生から自立した社会人へ向っての出発に当っての重要なテーマである。

一方、最近のように高級官僚をも含めた公務員の不正や、日本を代表する企業の不正が続出している時、国民一人一人が、自分達の会社や社会のあり方について考え、自分なりの意見を持ち、その社会建設に参画する事が極めて大切であると思う。同時にその社会人としての活動の大部分を、企業の中で過ごしている者にとっては、企業というものがどうあるべきか、自分の勤める会社が、どんな考えに基づいて企業活動を行っているかについて理解し、意見を持つこともまた非常に大切なことである。そこで3番目のテーマを加えることにした。

いずれのテーマもこれが正解であるという答のあるものではない。学生時代に考え議論したことがあるかどうかは知らない。しかし当社に入社したことをキッカケに、初めて知り合った新入社員一人一人が、テーマ毎に3時間という時間をフルに活用し熱心に考え、議論した事がそのレポートを読んで感じられる。

社会が貧しかった頃は、生活のための収入を得る事が最大の勤労目的であったが、世界でもトップクラスの豊かさを手に入れた今、与えられた社会や環境でただ生きるのではなく、自ら、社会や環境の育成や改善に関心を持ち、参画し、自らの生活の質、人生の質の向上について考え活動することは極めて大切なことだと思う。

一方企業についても同様の事が言える。 戦後の荒廃の中から立上るために、国民に働く場所を提供し、必要な生活物資を供給し、そして外貨を稼ぐ。そのために日本中の企業は走り続け、豊かな社会の追求を図って来た。その結果、10年以上も前に経済大国と言われるまでになったにもかかわらず、未だ売上や利益拡大に走る日本企業と日本人は、他の先進諸国からエコノミックアニマルという表現で批判されるようにさえなった。そこで初めて企業が社会貢献という問題に取組むようになった。

その一環として、文化活動への資金提供という形の貢献が話題になったが、それも不況と共に全く聞かれなくなった。最近では環境に優しいという言葉が流行している。しかし何かがおかしいような気がする。 企業が利潤を追求するのは当然なことであり、同様に文化を大切にすること、生活環境や自然環境に優しい(破壊しない)ということも当然なことであり、特別な社会貢献ではない。

私は企業の最高でしかも最優先すべき社会貢献は、社員を企業戦士に育てるのではなく、よき社会人、即ち社会との間で、Give&Takeのできる、自立した社会人に育てることだと思う。同時に企業自身が良き社会人(Corporate Citizen.企業市民)になることだと思う。企業はその活動を通じて、社員に大きな影響を与えている。従って営利団体であると同時に教育機関でもある。

私は企業人、経営者として、その事を大切にしたい。

(1998.04.22 記)

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