NCK株式会社
日本コンピュータ開発

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コラム「異見と意見」COLUMN

創業20年間を振り返って

株式会社日本コンピュータ開発(略称NCK)は去る3月末日、操業開始以来最高の売上高と経常利益を記録する中で創業満20年を迎えた。これを記念して去る9月17日、全社員で2泊3日の沖縄旅行を実施し、盛大な20周年記念船上パーティを催した。20歳は人間で言えば成人を意味する年齢である。奇しくも満20年を目前にした去る2月、当社と同規模の情報系企業から合併の申し入れを頂いた。正に成人と同時に結婚の申し込みを頂いたようなもの。あまりにも良いタイミングに苦笑したが、この申し入れは辞退した。企業規模の拡大や上場を通じた巨額のキャピタルゲイン獲得は当社にとっては目標ではなく、自らの能力に応じて社員育てをし、その結果としての企業成長を図る事が当社の目指す経営だからである。設立当時、その設立に係わった人から「不況が来たら最初に倒産する会社」とさえ云われた当社が、バブル経済崩壊を含む数々の試練を大過なく乗り越えて、ここに記録的な好業績の中で創業満20年を迎えられたことは感慨無量であり、苦楽を共にした社員と共にこれを素直に喜ぶと同時に、設立以来常に暖かいご支援ご指導を頂いた日立グループ各社並びに諸先輩の皆様に、心から感謝しお礼を申し上げたいと思う。

当社は1984年9月、日本中が狂奔したバブル経済の中で、日立グループのソフトウェア技術者確保の一環として、当時の日立製作所大森工場佐々木正博工場長の決断と強力なバックアップ、福山勝郎部長のご尽力、また波多野泰吉元日立製作所取締役のアドバイスの下に落合俊男氏を創業社長として設立、当時日立グループ唯一のシステムエンジニアリング専門会社であった日立コンピュータコンサルタント(株)(略称日立CK、三井忠夫社長)の全面的な経営支援を頂きながら、社員のすべてを採用と同時に同社に派遣することを前提に、1985年4月に操業開始したソフトウェア会社である。その為、社員の採用活動は村上英世日立CK総務担当取締役に、実務面を含めて全面的なご指導ご協力を頂いた。つまり当社はその設立当初から日常業務を含む経営全般を日立グループの日立CKと云う1社に全面依存すると云う形での創業であった。

その当社は操業開始後わずか2年半、社員数30人強のまだ会社の体をなしても居ない時、創業社長が突然不治の病に倒れた。そのピンチヒッターとして、かって日立製作所の同じ職場で落合創業社長と働いた経験があり、当時アメリカで現地に設立した会社の経営に携っていた私が急遽帰国し、会社の実態も知らないまま経営を引き継ぐことになった。通算6年間滞在したアメリカから久しぶりに帰国した私には、日本の経済も企業もバブルに浮かれているのが感じられ、また当社の設立経過と実態を聞き知るにつれ、当社は設立当初から本質的なひ弱さと危険性をはらむ異常な形でスタートした、正に「不況が来たら最初に倒産する会社」かも知れないと思った。そこで私はこの会社を徹底して改造変身させる事を決意した。

当社の発展過程を会社の寿命30年と云う視点から振り返ってみると、最初の10年間は創業社長の方針に基づく前期5年間と、社長交代を機にこれまでの5年間とは全く違った新しい理念を持った会社への生まれ変わりに取り組んだ後期5年間に分けることが出来る。その変身の基本的方向は、企業も社員も誰かに一方的に依存するのではなく、Give & Take (相互支援協力)を基本とする自立の追求と、経営の重点目標を売上高や企業規模の拡大追求では無く社員育てに置くと云う理念経営であった。つまり売上高や企業規模は経営の目標ではなく、自立した企業、自立した社員育ての結果であると云う認識で経営に当たる事とした。従って創業初期の10年間に引き続く次の10年間は、新しい経営理念に基づく良き社会人、良き職業人としての社員育てと、自立に向けた企業体制作りに専念した。その結果として売上高も規模も徐々に拡大し、満20年の当年、ついに過去最高の業績を達成する事となった。

創業満20年に当たり、過去20年間にわたって守り育て、定着して来た当社の理念経営と現在の姿を総括してみよう。

1) 企業としての基本姿勢

当社は、企業が正常に運営出来るのは「経営者が優れているからと云う前に、そこに健全な社会があるからである」と考えている。従って「企業は自己利益の為に社会を一方的に利用するのではなく、その社会の維持発展育成にも積極的に貢献すべきである」と云う姿勢で企業経営を行っている。つまり社会と企業の関係はGive & Takeであるべきで、企業がその社会を維持発展させる為に何らかの貢献をするのは、その社会から恩恵を受ける者として当然の責務であると考えている。

2)理想、目標とする企業経営

日本は世界第2の経済大国になって久しいにも拘らず、21世紀に入った現在でも相変わらず経済規模の拡大に向かって走り続けている。アメリカと日本の2カ国だけで世界経済を独占したいのだろうか。最近日本社会を騒がせたライブドア、楽天あるいは村上ファンドの例を挙げるまでも無く、自己利益、自己主張を通す為には手段を選ばず、他人への迷惑など無視して自己中心的な行動に走る者が目立って来た。金の力こそが正義と云わんばかりの振る舞いや風潮が、日本社会に多くの歪を生じさせている。日本は物質的豊かさと引き換えに日本の文化、日本人の心を失ったと云えよう。新しい時代は規模の拡大から質への転換の時代である。 このような考えから、当社は次のような経営を目指すことにした。

企業の倒産は株主、社員そして顧客、時には社会に大きな混乱や悲劇をもたらす。しかしながらバブル崩壊以降企業が生き残るために行って来た事の多くは、リストラと云う名前の社員の解雇、利益確保のための不正、企業によっては債務放棄、国民の税金による生き残り、またそれらの結果としての株価の暴落などで、生き残る為の行動が社会に混乱や悲劇をもたらした。人間が必ず死ぬように企業もいつかは倒産する。倒産は企業が経済環境に適応できなくなった結果であり、経済社会から引退を突きつけられた結果とも云える。従って社会に対して悪いことまでして生き残るより、倒産する事こそが社会貢献であると言える。しかしながら倒産によって社会的混乱を引き起こしてはならない。その為には企業がその元気な時に、いつ倒産しても良いように日頃から備える事が大切である。特に社員に対しては自己利益のためだけに働く企業戦士に育てるのではなく、いつどこの企業に転職しても通用する自立した良き社会人、良き職業人に育てる事である。社員が育てば結果として売上高も規模も拡大する。企業は最大、最高の社会人教育機関である。

3)経営理念と日常的行動指針

4)当社運営の特徴

以上のような経営姿勢、経営目標、経営理念などに基づき、当社が20年間にわたって努めて来た取り組みの中で主要なものを挙げると次のようなものが有る。

5)新しい取り組みと今後への期待

創業以来20年経った今、当社は140人余の社員を有するソフトウェア業界では比較的大規模と言える会社になった。独自理念に拘った経営と社員育ての結果、専門知識やビジネス面の実力においては未だ不足を感じているが、社内的には信頼できる良き社員、対外的には良き社会人、良き職業人集団に成長できたと自負している。顧客や学校、各種団体などからはその社風、企業文化に注目と信頼を頂き、多数の講演依頼を受ける一方で、NTTとの競争に打ち勝ち大手運送会社の重要システム開発を受注するなど、企業としての足場が固まって来た。

会社寿命30年の内の最後の10年間を迎えた今、今後さらに実力を磨き、これまでの社員育ての成果としてビジネスでは大輪の花を咲かせ、また社会的にはコロンビアの大学に設立する基金を通じて、困窮状態にあるコロンビアの経済活性化支援を軌道に乗せ、国内においては社員採用を首都圏採用から地方採用に方向転換することを通じて全国ネットワーク化を実現し、少子高齢化問題での地方支援に貢献したいと思う。皆さんと共に新しい挑戦を始めよう。

(2005.11.18 記)

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