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コラム「異見と意見」COLUMN

強い意志と勇気を持って自ら決断をしよう

日本は相変わらず厳しい不況の中に有り、最近又しても大手企業が、競うように人員削減計画を発表している。バブル経済崩壊以来、景気対策あるいは金融危機対策という名目で、政府は巨額の税金(100兆円の公共投資、70兆円の公的資金)を投入し続けてきたが、状況は一向に良くなっていないばかりか、将来に不安を残す国の借金(国債残高770兆円)は増えるばかりで、景気の回復も金融機関の不良債権問題解決も一向に進展していない。これはなぜだろうか?

私は、最近の日本人の国民性とも言える「決断の無さ」と「変革嫌い」即ち「リスクからの逃避」が主原因だと思う。何事を行うにもリスクが伴う。リスクが有るからこそ覚悟して決断する必要がある。リスクに打ち勝つ勇気が要る。

「10年一昔」の時代から「1年一昔」の時代になった。変化は速い。この変化に対応するには変革が必須である。変革には痛みとリスクを伴い、変化のスピードが速いほどリスクも大きい。一方で日本社会が平和ボケと飽食社会にドップリ浸って久しい。この間、多くの日本人は、リスクや厳しい努力を伴う願望や目標を持つ事を避け、自ら必要なリスクに立ち向うという勇気を失った。皆、中流意識の仲良しクラブの中で、成り行き任せ、他人任せ、自分だけがほどほどの幸せであれば、それで満足するようになってしまった様にも感じる。リスクの有る事には反対、現状の変革にも反対である。

日本経済の危機的状況について、元さくら総合研究所社長の大野剛義氏が次のように言っている。

【日本が直面する危機には1.金融危機 2.財政危機 3.IT革命乗り遅れ危機 4.リーダー不在危機の四つがある。その対策に巨額の資金を投入して来たが、一向に危機は解決されないままこの10年を失い、瀕死の企業が未だに生き永らえている。これは1990年を境に、世界では「所有」から「利用」への革命が起っているのに、日本人はこれに気づかず、変化への対応を誤り、必要な改革を先送りして来たからに外ならない。かって政治と企業は一体(企業は国に所有)であり、利益追求を通じて、企業と社員も一体(社員は企業に所有)である事に甘んじていた。これが機能したのは、豊かさとは所有する事であり、物を作りさえすれば売れた高度成長期までだった。90年代になって、所有から利用の時代への変化が加速した。これからは、過剰なも、過去の成功神話などは捨て、得意分野の所有以外は、他社の力を積極的に利用する時代であると認識しなければならない。】

私はこの大野氏の提案する「四つの危機」に対して、もう一つの危機、即ち「決断の欠如」という危機を付け加えたい。私たちは、自己の安全にこだわるあまりに、必要なリスクも避け、別のリスクが拡大している事にも気づかずに日々を過ごしていないだろうか。21世紀は既にスタートしている。

ここに幾つかの厳しい決断の例を挙げよう。去る9月11日、アメリカで同時多発テロが発生した。報復は更にエスカレートした報復を招くというリスク、一部国民の反対が有るにも拘わらず、ブッシュ大統領は、軍事力を使ってでもテロ集団撲滅の為に戦うと云う決断をした。これがベストの選択かどうかは、誰にも分からない。しかしリスクを承知の上で、テロには勇気を持って立ち向かうという意思表示、覚悟をした決断である。これが日本であったらどんな決断をするであろうか?

身近なスポーツの世界にも例はある。大リーグにチャレンジして行った、野茂、イチロー、そして新庄など。これは大変なリスクへのチャレンジ、勇気ある決断である。日本人にだってすごい人はいる。

20世紀を迎えた今から100年前、福沢諭吉は「独立自尊新世紀」と云う言葉を残して、この世を去ったという。闇が深いのは夜明け前と云われる。不安を乗り越えれば、新しい喜びが開けよう。闇にひるむことなく、変革の精神を掲げて、断固たる決意で臨めば、新たな夜明けを迎える事が出来る。

今こそ変革の時、自らリスクをとって、自らと社会を変革するため勇気有る決断をしよう。

(2001.10.31 記)

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