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コラム「異見と意見」COLUMN

新入社員を迎えて「人生は初めてのコースを走るマラソン」

人生は、死をゴールとして、初めてのコースを走るマラソンだ。40数キロを走るマラソンでも、日頃からの厳しい訓練、準備が要る。何十年も走り続ける人生というマラソンでは、一般のマラソン以上の十分な準備が要るのは当然だ。幼稚園から始まる学業はその準備期間、就職は出発点だ。

時は4月。多くの若者たちが不安と期待を胸に抱いて進学し、あるいは就職して社会に飛び出す季節。それぞれに祝福し、励ましてあげたいものである。しかしながら、幼稚園から高等学校まで、厳しい受験競争に明け暮れ、その最高学府である大学へ入学した途端、“5月病”にかかってしまう若者が多いと聞く。5月病?これまで入学したい学校という挑戦目標があり、それに向けて受験勉強に励んできた結果、大学に入学したことで目標を達成したと認識し、そこから先の目標を見失って気が抜けてしまうのだという。人生における学生時代の目的は、受験競争に勝ち抜くことではない。

学業の時が終わりに近づくと、キャリア教育というにわか勉強の知識と認識で、多くの時間とお金を費やして“良い就職先”を求めて就職活動を始める。そうして就職し、新たな社会人として出発した若者達は、期待と現実との違いに直面すると容易に離職、転職し、社会の中で浮遊を始めるという実態がある。厚生労働省が提供する統計資料によると、大学卒業者の最近3年間の実態は、社員数100人未満の企業で約39%、500人未満の企業で32%、1000人以上の大企業でも約22%が、就職後3年以内に離職しているという。このような現象は、過去20年近くにわたって日本社会では常識となっている。就職時の期待と実社会で直面する現実との違いに耐えられず、現実から逃避しているともいえる。

なぜこのようなことが起こるのだろうか?戦後の貧しかった時代と違い、誰でも進学できる豊かさを得た日本社会では、進学すること、つまり学校で学ぶことの目的が、受験競争に勝って“良い学校”に進学し、“良い学歴”を身につけ、“良い就職”をすることになってしまっているのではないだろうか?その就職に当たっては、安心安全な就職先として大企業、公務員指向、あるいは好きな仕事ができる就職先を求める者が多い。まるで部活への入部か遊園地に遊びに行くような感覚になっているのではないだろうか?それでは実社会に出て食い違いが生じるのも当然である。学業を終えて社会に出るということは、自分の力でこの社会の中を生きて行く、人生を送るということである。その時間はこれまで過ごしてきた学生時代よりはるかに長い。つまり何十年と走り続けるマラソンである。

日本には、伝統的な箱根駅伝競走はじめとして各地各種の駅伝競走があり、多くのマラソン大会がある。マラソン大好き国民と言えるだろう。その駅伝やマラソンの参加者は、厳しい環境の中で肉体的、精神的苦痛に耐え、ただひたすらゴールを目指して走る、実に過酷なゲームである。その為参加者は皆、日頃から自らに厳しい課題、負荷を課して練習、訓練に励み、実際に走るコースで何度も試走するなど、万全の準備をして本番に臨むのが当たり前である。その本番では、たとえ天候などの環境条件が変わっても、自分の体調や精神状態を調整して適応させ、苦痛に耐え、ただひたすらゴールを目指す。ゴールにたどり着かず途中で放棄するのは恥ずかしいことだと認識している。

一方で人生はマラソン。決して試しに一度本番コースを走ってみるなどということが出来ず、学業を終えて社会に出たら、直ちに本番コースを走り始め、そのゴールは何十年も先にある。走るコースとしての社会は意外性に富み、予測し難いもの。一般のマラソンに比べれば、はるかに準備に念を入れる必要がある。その準備期間が、生まれて以降学生時代を終わるまでの期間である。それにも拘わらず、学生時代を受験競争に明け暮れていては、長期にわたる、人生というマラソンに備えた鍛錬、訓練が出来るはずがない。その結果準備不足のまま、予測不可能な変化の多い社会の中に、自分勝手な思い込みで飛び込んで行くことになる。そして現実社会との違いに直面すると就職先を放棄して転職、つまりそのコースでゴールを目指すことを放棄して、走るべきコースを安易に変更するということになっている。

進学する人たちは、人生における学生時代の位置づけを正しく認識し、受験競走に明け暮れるのではなく、意外性に富んだ実社会の中でのマラソンに備えて、直面する種々の課題から逃げたり迷ったりしない肉体的、精神的な力を養おう。一方で新たに社会に出る若者たちは、全く経験のない初めてのコースとしての人生で、ゴールを見失うことなく、また途中棄権することなく、拍手喝采でゴールに飛び込むように、ベストを尽くして走り続けよう。人生は初めてのコースを走るマラソンだ。

(2016.04.26 記)

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