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コラム「異見と意見」COLUMN

成果は行動の後にしかついて来ない

5年ほど前に、日本を代表する企業団体「科学技術と経済の会」(会長企業日立製作所、事務局企業トヨタ自動車)から依頼を受けて、この団体が発行する月刊誌に「成果は後からついて来る」と云うテーマで寄稿した事があり、そのコピーがこのコラム[異見と意見]にも掲載されている。その内容は、九州の片田舎で貧農の3男として生まれ育ち、貧しさゆえに進学もままならないため、高校卒業と同時に就職で上京し、企業の中で教育され鍛えられて、40歳になった時、友人も知人もなく言葉も通じない異文化社会アメリカに単身で飛び込み、知識も経験も全く無い状態で会社設立から営業/顧客開発、輸入販売、工場建設そしてその経営などで通算6年間滞在し、58歳で当社の経営に当る迄の自分自身の生い立ちと体験を綴ったものである。今振り返ってみれば、18歳で社会に出て以降数々の困難に出会ったが、その瞬間瞬間では自分の任務にも運命にも疑問を持つ余裕も無く、避けたり逃げ出したりすることも無く、ただひたすら真正面から取り組んで来たという思い出がある。その結果としての実感、そして学んだことは「成果は行動の後にしかついて来ない」と云うことである。成果は自然にやって来る訳ではないし、誰かが与えてくれる訳でもない。どんなに知識があっても、どんなに言葉巧みに理想を語っても、そこに努力を含む行動、特に継続した行動が伴わない限り何の成果も得られないという事である。

今年はアメリカのメジャーリーグベースボールで日本人選手が大活躍した。いずれの選手も、日本球界を代表する一流選手であった。そんな彼らでも日々努力・練習し、自分を厳しく鍛え、時にはスランプにも落ち込み、厳しい試練に直面し、それらに押しつぶされそうになっても、自ら必死に努力し抜け出している。素質や理屈だけでなく、努力と云う行動が成果をもたらしている。野球選手としては高齢と云える37歳の斉藤隆、桑田真澄投手でも未だに挑戦の意欲を持ち、自らを厳しく鍛えているからである。

そのような視点で見れば、新卒に拘って社員を採用して来た当社は、社員に若さがあふれるばかりでなく、経営陣にも今40歳を少し越えたばかりの若さが有り、さらにすばらしい企業文化も育っている。若さが力なら優れた企業文化も企業としての力である。最近の日本社会には、成果主義に追い立てられて精神的余裕をなくし、あるいは与えられる豊かさに慣れ、安心安全の中にどっぷりと浸かってハングリー精神を失った社員集団が多くなった。しかし当社はそのような集団になってはならない。そのために社員一人ひとりが傍観者や評論家でなく、集団としての目標を共有し、ベクトルを合わせて、前に向ってとにかく自ら行動する集団であり続けよう。そのために経営陣は社員に対して目標や方向を指し示し、各人の行動の場、つまり能力発揮、実践の場を提供しよう。一方で、社員はその目標に向って挑戦する意欲を持ち続け、必要な知識や技術力を身に付け、行動することが最重要任務かと思う。そして会社寿命30年の中で第3ディケードに入ったこの10年間で、理念と共にそれに見合った社員処遇が出来るようなビジネスを育て、顧客育てを行なおう。成果は後からしかついて来ない。

一方で現在の日本社会を見ていると、生活の場を見ても、企業社会を見ても、あるいは政治の世界を見ても、多くの人達が目標を見失っているように感じられる。自分の事、目先の事にしか関心がないようだ。物質的な豊かさに目を奪われて、そのことばかり追いかけている内に、あのすばらしい日本文化も日本人の心も失ってしまったとしか思えない。その現象を別の表現で言い換えるなら「木を見る事にばかり目が奪われて、森を見るのを忘れてしまっている」と云える。さらに不幸なことは、皆誰かから与えられる事を期待するだけで、自ら行動することを忘れている。先ずは森を見て、その中で一つ一つの木の成長、存在の有り方、役割を考えたいものだ。何が大切であるのか視点を変えてみる必要がある。その上で自ら行動しよう。

今、日本が打ち上げた月探査衛星「かぐや」が月の周りを廻っている。そのハイビジョンカメラで撮影し送って来た地球の写真は実にきれいだ。アフガンやイラクなどでの人間の争いなどもつつみ込み静かできれいだ。その地球がいま悲鳴を上げている。地球上の人間一人ひとり、企業一つ一つ、そして国々が、このたった一つの地球を共有している事を忘れて、自分だけのために利用し、いじめ続けているからだ。その結果も後からついて来る。そのことに気付いた時には、地球は元に戻れないかも知れない。

この地球を救うのは、個人や国家のエゴではなく、知識や理屈だけでもなく、自己犠牲を覚悟した一人ひとりの行動でしかない。結果は後からついて来る。

(2007.10.31 記)

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