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コラム「異見と意見」COLUMN

明日は今日の次の日

今年は21世紀になって初めてのオリンピックが、その発祥の地ギリシャで開催される。今、世界のあちこちで、この大会に参加する代表選手の選考が佳境に入っている事だろう。日本でも続々と種目別代表選手の決定、発表が行われ、オリンピックを目指して黙々と努力を積み重ねてきた人達の、その努力が成果に結びついた喜びの声が聞かれる。

そのような喜びの姿が多い中で大きな論議を呼んだのが、高橋尚子選手の女子マラソン代表選考落ち問題だろう。この選考に異を唱える人達は、高橋選手が4年前に獲得した金メダリストとしての実績とその天才的といわれる素質を主張し、一方で、高橋選手を代表に選ばなかった人達は、選考の為のプロセス、即ち直近の選考レースでの実績を主張した。そして結果としては後味の悪さを残した。

この問題は、代表に選ばれた選手達のオリンピックでの成果によっては、再び大きな論議を呼び、実際に厳しいレースに取り組んできたアスリート達を傷付ける事になるかもしれない。しかしそのような論議を起こしてはならない。

この件に関して私達は、オリンピックの精神に立返り、その成果に関わらず、代表選手達のたゆまぬ努力と健闘を称えたいものだ。一般国民の一人として、私はこの決定の真実を知る訳ではない。しかしながら、好成績を残せば代表選手に選ばれる事が明らかだった選考レースで高橋選手は決定的な成績を上げられず、また次にもチャンスがありながら、その選考レースに出場しなかった事が問題の原因の一つである事は明らかだ。そこには過去の栄光が故に、選考レースに出場しなくても代表選手に選ばれて当然という、一部の人達の‘おごり’、‘うぬぼれ’があったのではないだろうか?

経済社会でもスポーツ社会でも、世界の変化は激しい。過去の栄光、過去の成功体験が将来をも保証する時代ではない。その時その時が真剣勝負だ。過去の栄光にあぐらをかいたり、実力の誤認でうぬぼれる事なく、常に謙虚に、誠意を持って明日に向って日々努力し、真剣に取り組む事だと思う。

「今日と云う日は昨日の次の日。そしてまた、今日と云う日は明日の前の日」。

これは先にもこの社内報に書いた言葉である。今日という日は、昨日の次の日で有り、今突然ここに現われたものではない。昨日までの諸々の結果として今日この日が有る。今ここにある自分の姿も、昨日まで自分が生きて来た結果である。今を嘆き、悲しみ、不平不満を言っても何の役にも立たない。それは全て過ぎ去った事の結果である。過去は直せない。しかしながら、だからと言って嘆き悲しむ事、あきらめる事はない。私達には明日が有る。明日という日は今日の次の日。明日の自分は、過去の栄光や失敗では無く、今日これからの、自分の行動の結果として決まる。

かつて10年一昔と云われる時代が有った。そういう時代は、過去の栄光、例えば一流大学を優秀な成績で卒業する事が、今日だけでは無く、洋々とした前途、明日をも保証するかの様であった。しかし今は21世紀。ドッグイヤーとも言われる変化の激しい、新しい時代。

今日と云う日は昨日の次の日。しかしまた、明日という日は、この変化の激しい時代になっても今日の次の日である。明日の自分は、昨日までの自分の行動ではなく、今日この日からの自分の行動で決まる。昨日、あるいは過去にどんな失敗があろうと、それは既に過去の事。くよくよする必要は無い。今日という日に影響はしても、明日に影響を与えないようにする事が出来るのが新しい時代。過去の成果が今日を支えても、将来を、明日を保証するものではない。過去の栄光を以って将来の栄光が保証されて当然と考えるのは誤解であり‘うぬぼれ’である。

今日この日を、その日その日をただ誠実に、誠意を持って精一杯生き、努力し、自分が納得できるように生きて行けば良い。成果は後からついて来る。

マラソンランナーとしての高橋選手は、天才とも言える逸材かも知れない。それに比べれば他のランナー達は、逸材とは云えないのかも知れないが、オリンピックを目指して苦しい練習を積み、決められた選考レースに出場し、汗を流した。その結果として代表選手としての切符をつかんだ。晴れの舞台では結果に拘らず、ただ自分のベストを尽くせば良い。そのひたむきな走りを楽しみにしたい。

当社は本年も第20期生として多くの新入社員を迎えた。それが一般世間で云う逸材であるかどうかは知らない。しかしながら当社にとっては大切な期待すべき人材である。

うぬぼれの無い、抵抗感なく、むしろ誇りを持って落ちこぼれ集団と言える謙虚な集団の一員として、先輩達と共に、希望の明日に向ってチャレンジして行こう。

「今日は昨日の次の日。そしてまた今日は明日の前の日」今日を精一杯生きよう。

(2004.05.12 記)

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